運転免許証完全制覇



プロローグ

 皆さんよくご存じの通り、2017年3月12日から改正道路交通法が施行され、準中型免許が新設されました。新設された経緯はWikipediaを読んでもらえば分かるだろうが、簡潔にまとめると高校を卒業したばかりのピチピチ18歳を人手が足りない運送業界にドップリと浸からせようというものだ。普段我々がほんの僅かな罪悪感を伴いながらも己の欲求に逆らうこと能わずAmazonをポチることが可能であるのは、彼ら運送業界の不眠不休による全国交通包囲網による賜物であるからして、この法改正には反対するどころか大歓迎である。しかし何事にも光があれば必ず影が生まれる。そう、フルビットを目指す高貴なる人々変人にしわ寄せが来たのだ。次に免許の更新を行うと、「準中型」の文字が出現する代わりに「普通」の文字が消滅してしまうのだ。しかも、「準中型で運転できる準中型車は準中型車(5t)に限る」などといかにもお役所仕事な条件文が付加されるというおまけも頂くことができる。このような愚行、あってはならない、そうともあってはならぬ!

 しかし不幸中の幸いか、まだ小生はフルビッターの駆け出しだ。準中型より上位免許となる中型や大型はまだ取得していない。つまり、「普通」を付け戻すのに返納しなければならないのは「準中型」だけで済むのだ。ここでいう返納とは、いわゆる限定返納というものだ。正式には運転免許の一部取り消しというのかな、静岡県警のホームページにわかりやすい説明があったので各自参照されたい。上位免許を取り消すことによって新たに下位免許を申請できるというものだ。こうすることで「普通」の文字を復活させるのみならず煩わしい条件文を消すことができる。小生がこの時代を生きていることに必然を感じざるを得ない。

 おまけの話。2017年3月12日以前に指定教習所で普通自動車の卒検を受かったとしても、免許センターで手続きをするのが13日以降になった人は自動的に法改正後の普通自動車しか運転できない。つまり車両総重量3.5トン未満の車である。5トン未満まで乗れるはずだったのに3.5トン未満しか乗れませんとなると将来欲しいと思った車がデカいと乗れない可能性がある。フルビットを目指していない限り、改正法が施行される12日よりも前に免許を交付された方が明らかに得である。ここに一つ落とし穴があった。免許センターはお役所、つまり月から金の平日のみ受付している。問題の2017年3月12日はなんと日曜日。つまり、実質3月10日の金曜日が5トン未満の普通免許を受けられる最終日であったのだ。3月11日に行けばいいやと思っていて、え!?土曜日やんってなったヤツ絶対いたに100円賭けます。


2018年
1月11日

 上記の手続きをして新たに準中型の車校に通わないかんなあと思うものの、トラック系の教習は愛しの中部日本ではやってないから別の車校を見つけないといかんなあ、などと何も行動をしないまま2018年がやってきた。AM3:33にお腹が減ったので卵を食べながらふと中部日本のホームページを開くと、目を疑う光景がそこにはあった。


 なんと中部日本が準中型の教習を開始しているではないか。浮気しないで良かった。


9月7日

 大型自動二輪の卒検に合格し(大自二を参照)、免許センターに行く用事がやっとできたので限定返納の方法や大型二輪を免許に付けるのと同じ日に手続きできるかを三重県免許センターに電話で訊いてみた。

「法改正前の普通免許を持っているんですが、新たに大型二輪を教習所で取ったので免許を付けに行こうと思ってるんです。その際に準中型免許に変わりますよね。その準中型を限定返納して3.5トンの普通免許にしたいのですが、何時ごろ伺えばいいですか?そもそもこの手続きって1日で済ませられますか?」
「....。えーと、準中型を返納して普通免許にしたいと。それはできないよ」

は?

 一瞬思考が途絶した。限定返納できない?そんなばかな。僕の思い違いか、いやそんなはずはない。Twitterで志を同じくする者が限定返納していたのを僕は知っている。警察署のホームページに免許の一部取り消しという欄があることを僕は知っている。中型が新設された2007年ごろに、中型8トン限定を持っているが故に中型車を運転させられ、それがいやで普通免許に格下げした人の話を僕は知っている。落ち着け、もう一度訊くんだ。
「返納できないってどういうことですか?(圧)」
「今回みたいに法が改正されることによって乗れる車が変わることを同意の上で普通免許を取ったと見なされるの。5トン未満までの車に乗れるという既得権益をあなたは有しているわけ。それを返納するということはあなたにとって損になることだからそれはできないの」

は?(2回目)

 こいつやべえ、何言ってるんだ。でも真っ当なことを言っているのか?待て、流されるな。僕が損することになるからできないと言ったな。ならば、上記の中型返納の話をすればいいだけ。
「損するからできないとおっしゃられましたが、2007年中型免許が新設された際、普通免許が中型8トン限定免許になり、扱ったことのない中型トラックを運転させられ肉体的精神的に苦痛を受けた人が限定返納したという話を聞いたことがありますが、これは損に値しますよね。自分もこういう状況だと申告すればよいということですよね?(圧)」
「でもお宅は全部埋めたいという自己満足ですよね?だからできませんよ」

うっ

 こいつ、フルビットを目指す者を全否定しやがった。許さねえ、絶対に何が何でも返納させてやる。心に怒りの炎が灯された瞬間だった。
「そうです自己満足ですよ(開き直り)。けれども他県ではそういった理由でも実際に返納できた人の話がインターネットにありましたよ」
「それはどこの県?」
「いえそこまでは覚えてませんが、確かに見ました」
「調べて折り返すから、電話番号と名前教えて。私、担当したナカニシね」
そう言って一旦電話が終了した。うまく返答したつもりだったが、もっと上手な切り返し方があったかなと後悔を感じ始めていた。もし、本当に限定返納できないとなれば、それは即ち僕のフルビット人生の終了を意味する。そんな現実を受け入れられるはずもなく、気休め程度ではあるが折り返しの電話が来るまでにもう一度Twitterで探してみた。確かに神奈川県の人が限定返納している。三重県でもできるはずだ。そわそわしながら電話を待つこと20分、僕のiPhoneが鳴った。嗚呼、この電話で僕の人生が決まるんだ。
「◯◯さんの携帯で間違いないですか?結論から言うとね...返納できます」
「!ありがとうございます(低姿勢)」
「9:30~10:00に二輪を付けて免許が出来上がったらその足で10番窓口へ来てください。私、ナカホが担当しますんで」
もう一度お礼を言って電話を切った。この瞬間ほどこのAAが似合うときはないのではないか。どうぞ↓


                                   ,.へ
       ___                             ム  i
      「 ヒ_i〉                            ゝ 〈
      ト ノ                           iニ(()
      i  {              ____            |   ヽ
      i  i           /__,  , ‐-\             i   }
      |   i         /(●)   ( ● ) \        {、   λ
      ト-┤.       /    (__人__)   \     ,ノ  ̄ ,!
      i   ゝ、_     |     ´ ̄`       | ,. ‘´ハ   ,!
       ヽ、    `` 、,__\              /” \  ヽ/
        \ノ ノ   ハ ̄r/:::r―–―/::7   ノ    /
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